こんなにも待ち遠しきは秋の風 旙山 芳之
こんなにも待ち遠しきは秋の風 旙山 芳之
『合評会から』(日経俳句会)
実千代 まったく、おっしゃる通りです。
水兎 今年の時事句ですね。
方円 素直に今年の猛暑を言っている。
操 四十度を超す地域もあった異常気象。爽やかに吹く秋の風が待ち遠しい。
戸無広 誰もが思うことをよどみなく表現した。
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まさに令和5年の夏から秋へを詠み止めた句である。同じ句会に「夕暮れの余熱の中に秋の風 篠田 朗」という句も出て、これも好評を博した。同じく、「地球が狂った」という句も出たが、とにかく今年の夏の暑さは異常だった。
立秋過ぎての暑さ、いわゆる「残暑」がたまらないものであることは誰もが納得、というか半ば諦め、覚悟しているのだが、今年はそれが9月に入ってもずーっと続いた。流石に9月も中旬になると、夕暮れの余熱の中にそこはかとなく秋を感じさせる風が吹いて来るようにはなったものの、日中35℃の猛暑日を記録する都市が東西南北あちこちに出現といった有様だ。
掲句の作者はこうした異常な夏をそのまま溜息をつくように詠んだ。昼日中、公園の樹蔭に逃げ込んで一息入れたところか、町場の夕暮れの一時か、とにかく首筋を撫でた風に秋を感じた。そして心からほっとしたのだ。
(水 23.09.17.)