三食をまかなふ日々のままに秋 廣上 正市

三食をまかなふ日々のままに秋 廣上 正市 『合評会から』(日経俳句会) 迷哲 今年は暑くて出かける気力もなく、冷房の家で朝昼晩の食事。素麵とか冷やし中華とかね。「猛暑」と「気がつけば秋」ということを上手に詠んでいる。 水兎 食べるのは楽ですが、作る方はものすごく大変。この句の作者は夏休みで子供が家にいるお母さんかもしれないし、一人で自炊している方もかもしれません。「今年の夏も頑張ったな」という感慨を持たれたのでしょう。 早苗 どういう状況か想像をかき立てられた。「まかなふ」「ままに」の「ま」と、「日々」。同じ音の繰り返しによるリズムが心地よい。 操 まさに実感。気がつけば繰り返しの日常に秋の訪れ。 百子 おさんどんに明け暮れる日々にも、時は確実に過ぎていくということでしょうか。なんだかむなしい。 ヲブラダ ああ疲れたという感じ。夏休みを苦闘したお母さん、と決めつけるとジェンダー的にまずいですね。 水馬 暑かった夏も食事の世話で気がつけば秋というところでしょうか。 弥生 生きる危機さえ感じながらの日々。この夏はこの句のごとしと。           *       *       *  体調を崩している妻を助けて食事作りに明け暮れた私は、この句を見て我が家を覗かれたのかと思った。同じような境遇の人が多くなっているのだろう、感慨一入である。 (水 23.09.07.)

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