何とせう大玉西瓜届きけり    大澤 水牛

何とせう大玉西瓜届きけり    大澤 水牛 『この一句』  今月の兼題は「西瓜」。西瓜の大きさを題材にしたものが結構多くあった。     六分の一切り分け西瓜売れてます   てる夫    ばーばにはサイコロ型の西瓜かな   斗詩子    好物の西瓜も今は持て余し      愉里    スイカ買う妻と二人で四半分     二堂 これ以外にもいくつか同様の句が見られた。大昔はたくさんの兄弟や親族で取り合いし、ちょっと前はファミリーで食べた西瓜が、今や老いたる夫婦二人だけで食べる家が多くなった。いずれの句もそういう家庭の事情をじゅうぶんに反映していて面白い。  その中でも、掲句は冒頭に「何とせう」というインパクトの強い口語を持って来たことで、特筆に値する面白い句となっている。作者によれば、最初「どうしよう」としたが、それでは面白くないので「何とせう」にしたという。おそらく、作者の頭には「如何にせむ」もよぎったのではないかと推察するが、こちらは少し大時代すぎる。「どうしよう」でも、「如何にせむ」でもなく、「何とせう」の軽妙さを採ったのがこの句のお手柄だと思う。  ところで、大玉の保管場所がなくて「何とせう」と思ったのかと問えば、作者の家にはなんと冷蔵庫が三台もありスペースは十分。到着後一週間毎日大好物の西瓜を食べ続けているらしい。「何とせう」はどうも困惑の表現ではなく、好物到来の歓喜の表現だったようだ。まことに、“食いしん坊万歳!”の句である。(可 23.08.09.)

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