夏雲や度胸試しの淵へ跳ぶ 中村 迷哲
夏雲や度胸試しの淵へ跳ぶ 中村 迷哲
『合評会から』(日経俳句会)
雀九 夏雲が湧き上がる中、子どもたちが高い所から飛び込んでいる光景が目に浮かんで来ます。
青水 昔の自分を見るようで懐かしい。水力発電所の堰堤から飛び込んだ日々を思い出します。
三代 男の子は度胸試しで成長したんでしょう。
守 作者の遠い昔の思い出のように読めます。
健史 「夏雲」が爽やか。
光迷 岩からだったり橋からだったり。魚を捕まえたりして。良い時代でした。
水馬 子どもの頃、川で泳いだ人は同じことを経験しているでしょう。
豆乳 プールの飛び込み台に立った時のドキドキを思い出しました。
定利 夏雲が良い。少年の何とも言えぬ顔が、目に浮かぶ。
* * *
作者の故郷は佐賀県鹿島市。旧鍋島藩の支藩で有明海に面した自然豊かなところだ。街の真ん中を流れる川が、昔の殿様の屋敷の裏手で深い淵になっている。淵の岩から飛び込み、向こう岸まで行って帰って来るのが「一人前の男の子」の証。迷哲少年も勇を鼓して挑戦した。
今はもうそういう習慣の残る所は少なくなり、またそれをさせる気風も無くなってしまった。その結果、こましゃくれた青白いオトナ子供が増えていくばかり。少々乱暴だが、こうして強い人間を育てた昔が懐かしい。
(水 23.08.06.)