サングラス目の日焼どめ病みて知る 久保道子
サングラス目の日焼どめ病みて知る 久保道子
『この一句』
軽い白内障と診断された作者は、医師から「サングラスが目の日焼け止めを防ぐ効果がありますよ」と聞かされ、なるほどと思い、それをそのまま詠んだという。「こういう事実があることを教えてくれたことに感謝していただきました」(三薬)との句評もあったから、同じように加齢と共に目が弱って共感を抱いた人が多かったのだろう、句会で高点を得た。
視・聴・嗅・味・触の五感はいずれも大切な感覚だが、中でも最も重要なのが「視覚」であろう。しかしものが良く見える人はそれを当たり前のこととして過ごしている。なにかの病気か加齢現象でものが良く見えなくなると、急に心細くなり、慌てだす。
特殊な眼病は別として、普通の人が目の不自由を訴えるのは大概は白内障によるものである。眼球の大部を占めレンズの役割を果たしている水晶体が灰白色に濁ってしまい、見ようとするものの像をうまく結べなくなる現象だ。多くは加齢によるもので、時には糖尿病が原因だったり、先天性のものもある。大昔から知られている眼病で「そこひ」と呼ばれていた。
医学の進歩で簡単な手術で治るようになったが、時には失明することがあるという。とにかく、ぎらぎらと照りつける真夏の太陽は白内障にはよくない。昔は黒く着色したガラスの「黒眼鏡」が眼病者の必需品だった。それが今ではお洒落なサングラスに変わっている。散文的な詠み方だが、「目の日焼どめ」という面白い言い方で句になった。
(水 23.07.18.)