乱読も楽しからずや梅雨の夜 和泉田 守
乱読も楽しからずや梅雨の夜 和泉田 守
『この一句』
「乱読」は「濫読」とも書くように、手当たり次第に手近にある本を読むことだ。しかし、本好きの人たちは大概“乱読派”なのではないか。新刊、古本問わず、本屋で目についたものを買って来て書棚に置く。書棚は既に二重三重になっていて、奥に何があるか分からないほどになっている。
こういう人にとって、長梅雨はツンドク本整理の絶好の機会だ。周りの人達が「ああまた今日も雨」とうんざり顔のこんな日こそ、どこそこへ行こうなどという浮気心を起こさずに、腰を据えて本が読める。昼間からずーっと、書棚と自分の机との間を行き来する以外は本と付き合っている。
「そう言えば、この問題についてはあの本があったな」と思い出し、それを探しに立ち上がる。ついでに、読みたいと思って買ってきたのにそのままにしてあった本に気がついて、それも持って来る。こうして、机の上はもちろん、椅子の周りにまで十数冊の山が出来てしまう。気がつけば夜もだいぶ更けている。本棚整理は「又の機会」となる。
作者は「乱読も楽しからずや」と言っている。何たる時間の浪費かという自嘲もちょっぴりうかがえるが、九割方はこれぞ至福の時という気分に浸っているようだ。長梅雨も味方につける愛書家の面目躍如たる句ではないか。
(水 23.07.13.)