AIに悩み相談油照り      中野 枕流

AIに悩み相談油照り      中野 枕流 『この一句』  AIとは人工知能のこと。コンピューターの発達は目覚ましく、人間の知能レベルまで達しようとしている。例えば、画像認識による自動運転、ディープラーニングによる碁将棋の対局プログラム、音声認識による口述筆記など、日常生活の様々な分野でAIが活躍している。将棋ではAIがプロ棋士より強くなってしまったが、対局中継などでAIによる形勢判断や最善手の予想を表示することで、初心者でも楽しめるようになった。  俳句の世界でも「AI一茶くん」という北海道大学の研究室が開発した俳句自動生成ソフトが作った俳句は、句会に出してもAI作かどうか見分けがつかないという。昨年秋に公開されたChatGPT(人間と同じように会話ができるAI)は、瞬く間に世界に広まり、その功罪併せ世間を賑わせている。  掲句の作者は、そのAIをさっそく句材に選んだ。悩みを相談したというAIは、ChatGPTか。配した季語の「油照」は、薄曇りで風がなく、じっとしていても脂汗がにじんでくるような蒸し暑い日のこと。つまり、悩み事をAIに頼るようになるなんて鬱陶しいなあ、というような句意だろう。  作者はこの春、日経俳句会に入会したばかり。これまで作句経験はないらしいが、新聞社の現役記者で文芸全般に造詣が深い。新しい人の斬新な句がこれからも楽しめそうだ。 (双 23.06.22.)

続きを読む