シャボンの香残す少女や夕蛍 廣田 可升
シャボンの香残す少女や夕蛍 廣田 可升
『合評会から』(番町喜楽会)
愉里 現実の風景ではなく想像の句かなとも思いますが、清らかでいい絵だと思いました。
てる夫 こういう目に会ってみたいですね。風呂上がりのお嬢さんが蛍狩りにきて…。
而云 「シャボン」は最近使わない言葉ですね。昔の思い出を詠んだ句の気がします。
斗詩子 お風呂上りに浴衣を着て親に手を引かれ蛍狩りに来た少女の嬉しそうな様子が目に浮かびます。
青水 「シャボンの香を残す少女」はもはや常套句のようになっていて、どんな下五にも付く気がします。
* * *
なんとも懐かしい感じのただよう、敢えて言えば郷愁の一句である。東京オリンピック、といっても令和のではなく、昭和のそれが行われた頃、東京の世田谷にも田圃があり蛍が飛んでいた。現在は地下を走っている田園都市線が玉電と呼ばれた路面電車だった時代のこと。
それに「シャボン」という言葉も古めかしく、石鹸もあまり使われなくなった。いまはシャンプーにリンス、ボディーソープなど。「蛍が姿を消したのは農薬のせい」などとされるが、高度成長で物は豊かになったものの心は貧しくなったような気もする。
(光 23.06.14.)