初孫は名付けて翔平鯉のぼり    中沢 豆乳

初孫は名付けて翔平鯉のぼり    中沢 豆乳 『合評会から』(日経俳句会) てる夫 海の彼方から日本列島まで、地球上が翔平に捕らわれたようなブームですから初孫に名付ける人も一人や二人ではないでしょう。 三薬 荒木大輔、松坂大輔の時は大輔ブームでした。 反平 翔平ということだけで採りました。 方円 分かりやすく、明るい。翔平で鯉のぼりだから合っているし、なるほどと思いました。 百子 本当にあんな孫がいたら幸せでしょうね。我が孫に欲しいです。 定利 何処を向いても大谷君。超今風の句。鯉のぼりの季語も良い。 双歩 昔は五月の節句には鍾馗様とか武者人形を飾りましたが、それが今や翔平ですもんね。            *       *       *  今や世界的に注目される大谷翔平選手を巧みに詠み込み、誰もが感心した句である。先日の朝日俳壇にも「初孫の名を翔平とつけし春」の句が選ばれていた。大谷選手の大活躍が同じような着想の句を生んだのだろうが、出来栄えは掲句が格段に優れている。俳壇句の方は散文的で、季語の春が取って付けた感じである。これに対し掲句は季語がピタリと決まっており、グランドを縦横に駆けるユニフォーム姿の大谷選手と、大空を泳ぐ鯉のぼりが二重写しになる。さらに弾むような句のリズムも初孫を得た高揚感を生んでいる。最後に作者が独身の豆乳氏と分かって、「やられたー」と句会は笑い声に包まれた。 (迷 23.05.05.)

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