仏壇に慶事を報せ桜餅     玉田 春陽子

仏壇に慶事を報せ桜餅     玉田 春陽子 『合評会から』(番町喜楽会) 百子 花が咲けばすぐ仏壇に供える。いいことがあれば仏壇に報告する。なにかあるとすぐに仏壇に手を合わせる、ご先祖様を大切にされる方なのでしょう。いい光景を詠んだ句です。 てる夫 私も珍しいお酒などをいただいた時など、まず仏壇に供えます。 双歩 何にしてもおめでたい。桜餅はもとよりお酒もあげてください。 木葉 この時季の慶事と言えば入試合格か。桜餅が似合う。 迷哲 どんな慶事を仏壇の誰に報せたのでしょうか?慶事を喜ぶ気持ちと桜餅がぴったり合う。            *       *       *  仏壇の前の小さなドラマを描き、読者の心がほっこりと温かくなる句である。春の慶事といえば進学、就職が思い浮かぶが、結婚も考えられる。報せた相手は祖父母であろうか。供えられた桜餅の香りと甘さが慶事の喜びを倍加する。  日本の家庭の多くは家の中に仏壇を置き、亡き人の霊を迎え入れて、毎日花やご飯を供えている。菓子や果物の頂き物があった時などに、まず仏壇に供えて来なさいと言われて育った人は多いと思う。選者のコメントからも、そうした宗教文化が広く根付いていることがうかがえる。  仏壇、慶事、桜餅の三位一体で、春の日の幸せな一家を浮かび上がらせる。句のリズムもよく、季語・桜餅を下五に置くことで、全体がめでたい桜色に包まれる。まさに手練れの一句というしかない。 (迷 23.04.24.)

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