何食ふて鵯太し春の庭      高井 百子

何食ふて鵯太し春の庭      高井 百子 『季のことば』  ヒヨドリは10,11月に暖地に移動する姿が目立つことから秋の季語になっている。しかしこの句は「春の庭」と組み合わされており、四角四面の句会では「季節違いの季重ね」として排斥されてしまうかも知れない。だが現実には鵯は春の庭でしょっちゅう見かける。ヒーヨヒーヨ、ピーピーととてもうるさい。雀の二倍くらいの大きさで、頭の後ろの毛が数本逆立ち、まさに利かん気のアンチャンといった感じだ。いかにもふてぶてしい様子だが、どこか間の抜けた感じもして憎めない。この句はそんな鵯を実にうまく詠んでいる。  春の庭には鶯や目白が梅やアンズ、椿、桜の蜜を吸いに来るが、鵯も蜜が大好きだから鶯や目白を追い払う。しかも鶯や目白がしおらしく蜜を吸うのと異なり、蜜を含んだ花の元を突っついて片端から花を散らしてしまう。散歩道などで桜の五弁花がそのままに沢山落ちていたら、それは鵯の仕業である。「にくらしいわねえ」などとオバサマ方は言うが、鵯にしてみればこれも4,5月の子育てのための栄養補給行動なのである。この頃は花に寄って来る昆虫類も食べる。  朝鮮半島南部、中国南部、フィリピンあたりにも生息しているのだが、鵯と言えば日本ということになっており、「鵯に逢うのが楽しみ」と日本にやって来る欧米のバードウオッチャーが多い。ちなみに鵯を英語ではbulbul(ブルブル)と言う。鳴き声からか、椿の花に首を突っ込んで蜜を吸い、花粉だらけの首を振っている様子から言ったのか、愉快…

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