春昼や波郷の町に踏むペダル 廣田 可升
春昼や波郷の町に踏むペダル 廣田 可升
『合評会から』(番町喜楽会)
百子 波郷の町は四国でしょうか。春ののどかな景色を見ながら自転車をこいでいる。そこに波郷を持ってきたのがいいですね。
てる夫 波郷のことはよく知りませんが、息子の修大さんのことはよく知っています。波郷の生地を調べたら松山だというので、この句をいただきました。
春陽子 俳人の名前が出る句は番喜会では初めてではないかと思います。「よくぞ」という思いで一点入れさせていただきました。
白山 砂町に吟行に行ったことがあり、波郷の町とは砂町にちがいないと思いました。砂町といえば波郷だというくらい思いこんでいます。誰の句かだいたい想像がつきます。
青水 「春昼」「波郷の町」「ペダル」と来ると、言うことないですね。説得力のある句です。ぼくにも作者はわかりました。
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自転車で下町散歩とくれば、この句会では作者がすぐに解ってしまう。作者自身も「身元の割れる句はあまりよくないなと思ったのですが、『江東歳時記』に書かれた場所をあちこち走り回ったので、どうしても投句したくなりました」と言っている。遠慮する必要は毛頭無い。身元が割れようが割れまいが、それで票を入れるかどうか斟酌するような同人たちではない。良くない句だったら遠慮会釈無い辛辣な評言が飛び交う。無論この句は「春昼」という季語が十二分に生きた句である。
(水 23.04.14.)