手間かけてロールキャベツの日永かな 高井百子
手間かけてロールキャベツの日永かな 高井百子
『合評会から』(番町喜楽会)
幻水 女房もよくロールキャベツを作ります。それを眺めていると、本当に面倒くさいんです。時間もかかるし。「日永」とよくあっていると思います。
可升 「手間かけて」はちょっと説明的かなと思いました。しかし「ロールキャベツ」とくると、「作る」とかの動詞をもって来がちなところを、「ロールキャベツの日永かな」と止めている。これがいいなぁ。
光迷 のんびりした、ゆったりした感じが出ていると思います。手間を掛けながら、時間を掛けながら丁寧に料理をしているんでしょう。「日永」だからできるのでしょうね。
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たしかに「ロールキャベツの日永」がいい。うららかな気分の伝わる、とても良い句だ。私もロールキャベツが大好きでよく作る。だから、この「手間かけて」は実によく分かる。
キャベツの葉を破らぬよう一枚一枚剥がすことに始まって、みじん切りの玉ねぎ、人参を炒め、粗熱を取って挽肉とパン粉、牛乳、卵を混ぜて、香辛料を振り込み、練り合わせる。それを卵形に丸め、湯通ししたキャベツでくるみ、端を楊枝で止めて・・と、かなりの手数である。
しかし、そういうことをわざわざ「手間」と言わぬのが華ではないか。「ことことと」とか「じっくりと」などとしておいた方が読者の胸にすんなり収まりそうだ。しかしまあ「手間かけて」と言いたくなるのも人情、ではある。
(水 23.03.30.)