街角に地図読む人や春の風 玉田 春陽子
街角に地図読む人や春の風 玉田 春陽子
『合評会から』(番町喜楽会)
幻水 コロナ禍が去って外国人の旅行者が多くなり、こんな光景をよく見るようになりました。
百子 最近は携帯片手にグーグルマップでしょう。春になって人が外に出るようになっています。
愉里 私は、新生活を始める学生が、下宿探しをしているような光景を想像しました。
而云 「地図を読む」がいいと思います。図面を書く人のような、なにか職人の感じがします。
青水 外国からの旅行者は地図を片手ですよね。今の時期を考えると、時事句かなぁ。
水馬 春風に誘われた旅人の図。うらやましいです。この人は花粉症ではないんでしょうね。
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春の街角で見かける光景をさらりと詠み、季節感と時代を映した句として、3月の句会で最高点を得た句の一つ。じっくり眺めていると、言葉の選択、語順など考え抜かれた句と思えてきた。「街角に」の上五によって、賑わいのある大きな都市がイメージされる。そこに地図を見るのではなく「読む人」を配する。読むという行為によって、地理や目的地を懸命に探している人物が浮かぶ。コロナの入国制限が解けて来日した外国人は、憧れの国で地図を頼りに街歩きに余念がないだろう。入学のため都会に出た学生は、慣れない雑踏に右往左往しているのかも知れない。「人や」で切って人物に焦点を当て、具体的な人物像は読者に委ねる詠み方も効果的だ。
そして下五で人々に、街に「春の風」を吹き渡ら…