春浅し巣穴の熊の二度寝かな   篠田  朗

春浅し巣穴の熊の二度寝かな   篠田  朗 『合評会から』(日経俳句会) 実千代 想像しただけで楽しい句なので、採りました。二度寝するなんて童話の世界みたい。 鈴木 冬眠する動物は途中で一回目が覚めて、その辺りを一回りしてからまた冬眠するようです。そこが面白い。人間の「あと十分」とかいう二度寝とは違う。 迷哲 熊の実際の生態にしても、メルヘンにしてもどちらでも面白いと思った。 静舟 熊も人間も二度寝の楽しみを知ったらどんどん堕落するような。でもその誘惑に勝てない。 三薬 マタギの関連本を何冊か読んだが、熊が二度寝するとは書かれていない。            *       *       *  熊の二度寝を巡って句会で議論を呼んだ愉快な句である。巣穴で冬眠中の熊が春の訪れを感じて薄目を開けたら、寒の戻りで外はまだ寒い。もう少し寝ようとまた目をつぶる。そんな情景は十分ありそうな気がする。まだ雪が深い早春の山の気配と、心地よい巣穴でじっと本格的な春を待つ動物たち。暖かくなったと思ったらまた寒くなる初春仲春の気分を、熊の二度寝で笑いを誘いながら上手く表現している。  句会でいろんな意見が出たように、冬眠中の熊の生態はよく分っていないらしい。最後に名乗り出た作者が「二度寝したのは実は熊ではなくて私なんです。春の二度寝の心地よさを、熊になぞらえて詠みました」と解説して大笑いとなった。  (迷 23.03.07.)

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