冬晴れやこの大窓のこの青さ   大沢 反平

冬晴れやこの大窓のこの青さ   大沢 反平 『この一句』  技術革新の成果を身近に感じるのがガラス窓の大きさである。高度経済成長のⅠ970年代には開放感を示し、「明るさ」を誇示した大きなガラス窓を設えたビルや住宅が現れた。バブル経済と言われた90年代にかけては更に“ガラス窓の進化”が進み、東京・丸の内、大手町に続々立つ高層ビルの総ガラス張りの表玄関は目をみはるものがあった。成長企業は業績好調を誇示するかのように新ビルを建て、一階の玄関口は二階まで達する一枚張りのガラスで人目を引いた。せっかちでおっちょこちょいが、そういったビルのガラス扉に激突して昏倒する事故も起こった。  いまや一般家庭の住宅でも戸建て、マンションを問わず、桟の無い総ガラス張りの大窓が珍しくない。  確かに大窓ガラスは気持が良い。この句はそれをおおらかに詠み上げている。それがまた素直で気持いい。ことに冬晴れの、奥深くまで見通せるような青空を見上げると、一瞬憂さを忘れる。しかもこちらは大窓に守られた温かい室内に居る。天国、極楽とはまさにこういう気分のする場所ではなかろうかと思う。  しかし我に返れば、悲しいかないつまでも極楽に座って青空を眺めてばかりも居られない。あれもしなければ、これもしなければ・・と浮世の柵にかけられた野暮用が山積している──と、大窓の青空を見上げて吐息つく。 (水 23.02.08.)

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