七福神変わる新宿路地巡り 前島 幻水
七福神変わる新宿路地巡り 前島 幻水
『この一句』
正月松の内の七日に句会恒例の七福神吟行を催行した。今年は「新宿山ノ手七福神」。区内に散在する七社寺を巡る穏やかな冬晴に恵まれ、20人が新宿の繁華街を通り抜けながら福を授かって回った。
コースは新宿御苑駅にほど近い古刹・太宗寺をスタート地に、ゴールの神楽坂・善國寺まで七キロ弱。足弱な人は一部地下鉄を利用しつつ、全員が元気に巡り終えた。掲句はその七福神吟行をさらりと詠みながら、コースの特質をよく伝えている。
新宿は変貌の激しい街である。コースの前半には昔の赤線地帯・新宿二丁目、飲み屋が密集するゴールデン街、さらにはラブホテル街が続く。狭い路地に古びたバーやスナックが並ぶ一方で、派手なホテルが軒を連ねている。途中には寄席の末廣亭が昔のたたずまいで残っていたり、ビル街の谷間にめざす神社があったりという具合だ。
作者は路地を歩きながら、若き日、あるいは壮年の頃に訪れ、遊んだ新宿を思い返したのではなかろうか。「変わる新宿」はありきたりの表現に見えるが、実際に路地を歩いた体験があると、そこに変わってしまった新宿、還らぬ日々への哀惜が込められているように思う。
(迷 23.01.22.)