寒の入ホテルに消えた今弁天   中沢 豆乳

寒の入ホテルに消えた今弁天   中沢 豆乳 『合評会から』(新宿七福神吟行) 迷哲 恋多き現代の弁天様は、愛を確かめるためにホテルに籠られるのですね。 三薬 場所柄、目に入ってしまった。と、言うよりも目を皿にして探してたんちゃいますか?爺さんまだまだ、生臭でんな。弁天さんばかり見てると、奪衣婆に睨まれまっせ。 水牛 鬼王稲荷に行く途中、歌舞伎町のホテルに独りですっと入って行く半コートの女性があり、私が思わず「あ、ご出勤だな」とつぶやいたら、誰かが「何、それ」と。IT時代の「派遣遊女」です。スマホで選んで、指名して、指定の場所に「出前」する(のだそうです)。            *       *       *  新春七日に「新宿山ノ手七福神」を巡った初吟行の句である。コースの途中にラブホテル街があり、そこで目にした女性を、何とも色っぽい句に仕立てたものである。弁天様(弁財天・弁才天)はヒンズー教の女神が仏教に取り入れられたとされ、日本では琵琶を持った姿で知られている。音楽や知恵、財福の神とされ、七福神中の紅一点である。新宿七福神では、抜け弁天と呼ばれる厳嶋神社に祀られている。  その抜け弁天へ向かう道すがらの光景。作者は同行の水牛氏の〝解説〟を聞き、句想を得たのであろう。あたかも寒の入り翌日の七日。ホテルに入られた弁天様を想像するのも、七福神詣ゆえと許されたい。 (迷 23.01.18.)

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