迎えなき退院の日は冬の雨 石丸 雅弘
迎えなき退院の日は冬の雨 石丸 雅弘
『合評会から』(三四郎句会)
久敬 退院日に迎えが誰もいない心細さをしみじみ感じます。
諭 迎えがないばかりか、冷たい雨が降っている。哀愁を覚えますね。
有弘 老いの侘しさを感じますが、これに耐えなければならない。
賢一 寂しいけれど、これが現実なのかな。
尚弘 そうですね。独り者の寂しさがよく表れている。
進 私も体験しています。この頃は慣れたものですが・・・
桜子 寂しさの中に現代的な感じもあって、好感が持てました。
* * *
「迎えなき退院の日」は、さまざまな状況が考えられよう。奥さんが勤めに出ているとか、別の用事があるとか。すでに亡くなっている、ということもあるだろう。作者は快晴の予報を信じ、家族に「迎えはいらないよ」と伝えていたのかも知れない。
タクシーを呼び、我が身を労わりつつ、「よいしょ」などと言いながら、座席に乗り込むと、後は無言のまま。回復の状態を「もう大丈夫だよ、ほらね」と、奥さんに示せないのが、一番、寂しいことなのだろう。
(恂 23.1.11.)