つきささる冷えた身体に寒灸 久保 道子
つきささる冷えた身体に寒灸 久保 道子
『季のことば』
「寒」は二十四節気の小寒(1月6日頃からの15日間)と大寒(1月20日頃からの15日間)を合わせた30日間を言う。いわゆる「厳寒の候」である。
この寒さを利用して、寒天、高野豆腐、凍蒟蒻(しみこんにゃく)といった保存食品を作る。また、身体を鍛える絶好の機会だと、滝に打たれる寒垢離(かんごり)や寒中水泳、寒稽古などが行われる。そうした激しい運動に耐えられない年寄りや病弱な人は、寒中に殊の外効くと言われる温泉療法(湯治)や、この句のように寒灸(かんやいと)を据えたりする。
灸は鍼(はり)、指圧などと共に古代中国に生まれた医療法。一時は「迷信」などと蔑まれ押しやられたが、20世紀後半からその効力が見直され、今ではWHO(世界保健機構)のお墨付きまで得て世界中に流行するようになった。
人体には活力の素となる気血を流す経絡(けいらく)があり、その要所(経穴・つぼ)が361箇所ある。病気になったり具合が悪くなった時に、漢方医師は経穴を触診し、どのような病か判断し、薬を処方する。鍼灸医は経穴に鍼を打ったり灸を据えて刺激を与え、経絡の働きを良くして病を治す。指圧はツボを抑え圧迫刺激によって治す。
不摂生が祟って私は40代にぎっくり腰になり、整形外科では治らず、指圧、鍼灸に頼った。実によく効いた。しかし、お灸はとても熱い。熱いからこそ効くのだと言われても唸ってしまう。まさに「突き刺さる」感じなのである。作者はそれをまさにツボに…