これからだ三年枠の日記買ふ 高石 昌魚
これからだ三年枠の日記買ふ 高石 昌魚
『この一句』
師走の書店や文具店には日記コーナーがあり、様々な日記が並んでいる。3年日記、5年日記などの連用日記には10年日記というのもある。筆者は5年日記を愛用しているが、連用日記を見返すと毎年似たような行動をしているのが分かり、歳月の速さと進歩のなさがうかがえる。句会でも3年、5年日記は人気だった。
掲句の魅力はなんと言っても「これからだ」という力強い上五にある。事情はよく分からないが、きっぱりと前を向く毅然たる意思を感じさせるフレーズだ。何か異変があったのだろうと推測されるが、作者の固い決意を前に、思わず拍手を送りたくなる。聞けば作者は、これまでは5年日記を使っていたが、令和4年、健康上の問題が起き1年日記でもいいかと思ったものの、いや令和5年も頑張ろうと3年枠にしたという。
この句が発表された暮の句会当日、当ブログでも紹介された作者の「年甲斐もなきシャツの色竹の春」というなんとも若々しい素敵な句が、日経俳句会の年度賞に輝き、表彰された。精神の若々しさ溢れる作品を詠み続ける作者の本領発揮。掲句は高点を得て一席となり、受賞に花を添えた。
(双 23.01.01.)