この道は抜けられません石蕗の花 杉山 三薬
この道は抜けられません石蕗の花 杉山 三薬
『合評会から』(日経俳句会)
実千代 標語のような表現がかえって石蕗の花の情景を強くしています。
明生 行き止まりなのか、工事中なのか。石蕗の花が見事に咲いているため、心優しい筆者が願ったのかも。
木葉 石蕗の花は路地などの片隅にひっそり咲く。佃島辺りか。「この土手に上るべからず警視庁」を思い起こす。
光迷 どこにでもある立札を頂戴しての俳諧味(?)。「この土手を登るべからず…+季語」を言いはやしながら遊んだ覚えがあります。
弥生 石蕗あるあるの面白い一句。行き止まりやこの手の看板のある処、不思議と石蕗に出会います。
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石蕗という草は、もともとは野草だけれど、周囲に花が無くなった冬につややかな緑の葉を光らせ、そこから花茎が立ち上がって黄色い温かみを感じさせる花を咲かす。そこが面白いと庭の岩蔭、つくばいの裾、脊戸の木戸口などに植えられるようになった。自然に飛び散った種から芽生えたのか、路地裏などに生えていることもある。とにかく、表通りに堂々と植えられるものではなく、下町の家と家との間の狭い路地に似合う。
「この道は抜けられません」というフレーズが石蕗と絶妙に響き合っている。
(水 22.12.19.)