再婚の新居はリノベ冬ぬくし 高井 百子
再婚の新居はリノベ冬ぬくし 高井 百子
『この一句』
再婚・新居・リノベとめでたい言葉が連なり、冬ぬくしの季語と呼応する。まるで宝尽くしのような賑やかな句である。
リノベーションは不動産市場の成熟化に伴い、近年増えている工事分野である。大規模改修を意味するが、部分的に改造するリフォームと違い、規模が大きく、間取りの変更や新機能の付加を伴う。古民家をレストランに造り替えたり、古い住宅の間取りや内装を全面的に刷新する例などが分かりやすい。
掲句の再婚夫婦は新居としてリノベされた家を選択した。再婚とリノベの言葉の親和性がとてもいい。再婚とは人生の仕切り直しであり、夫婦で新しい家庭を築いていく。リノベも古い家を刷新し、新しい価値を生み出すものだ。リノベは新築よりも安く、希望に沿った間取りや設備を実現できる。リノベの家を新居に選んだ夫婦に、地に足の着いた堅実な生き方を感じる。
句会での作者の弁によれば、先行きを案じていた三男が再婚、リノベしたマンションで新生活を始められたという。息子の再婚を喜び、幸せを願う親心が、にぎやかな言葉の連なりとなって表れたものと得心した。冬ぬくしの季語と相まって、読む方の心もほっこりと温もってくる。
(迷 22.12.18.)