陽の匂ふ子供の髪や帰り花    谷川 水馬

陽の匂ふ子供の髪や帰り花    谷川 水馬 『合評会から』(酔吟会) 愉里 「陽の匂ふ子供の髪」の措辞で自分の子供のことを思い出し、そういうこともあったなと思っていただきました。 双歩 たしかに子供の髪に陽の匂いを感じることがありますね。そういうのをうまく句に詠んだと思います。帰り花もほのかな匂いで、子供の髪の匂いほのかさとよく合っています。           *       *       *  帰り花には寂しさがつきまとう一方、小春のぽかぽかした陽気の中にぽっと咲いて、行きずりにこれを見つけた人が、何か思わぬ拾い物をしたかのような感じを抱くところがある。つまり「帰り花」という季語には「寂しさ」と「明るさと温み」の両面がある。古今の例句を見ると、取り上げ方はごく大雑把に「寂しさ」6と「明るさ」4といったところか。  初冬の小春日には着ているものを一枚脱ぎたくなるほどの気温になることがある。しかし日暮れは早い。浮かれて遊び廻る子供たちを引き寄せて帰り支度する。うっすら汗ばんで、髪の毛は日向くさくなっている。  健康的な感じが伝わってくるこの句は、「帰り花」の明るい側面を詠んで成功している。 (水 22.12.06.)

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