独り居のよいしょと立ちて葱刻む 今泉 而云
独り居のよいしょと立ちて葱刻む 今泉 而云
『合評会から』(酔吟会)
道子 「よいしょ」という言葉が自分自身に響いてきて、立ち上がって葱を刻む。日常をちゃんと捉えている気がしました。
双歩 独り居ですから、「たいしたことは出来ないけれど、葱くらい刻むか」というところでしょうか。侘しい気分がよくでています。「葱」がいいですね。
百子 葱を洗って刻めば、お醤油をかけて食べられるし、豆腐に乗せるのもいい。独り居にはぴったりです。
春陽子 「よいしょ」で期待を持たせて、そのあとで「なんだ葱か」と思わせるところに俳味があります。
水馬 実家に帰った自分の姿にぴったりの句です。
三薬 「独り居」がわざとらしくて採りませんでした。
* * *
「よいしょ」と言い出したら老いの始まりとよく言われる。それで私は「よいしょ」と言わないように心がけているのだが、ついつい発してしまう。「よいしょ」は不思議な言葉である。
合評会でわざと悪口を言うことで人気のある三薬さんが「独り居」がわざとらしいと言った。たしかに「よいしょ」と立ち上がって葱を刻むというのだから、年寄りの独り居は言わずもがなという感じもするが、まあ目くじら立てるほどのこともあるまい。湯豆腐でも作るか、と腰を上げた老夫の姿がまざまざと浮かぶ。連れ合いはすこぶる元気で短日の今日もお出かけである。
(水 22.12.04.)