故人(なきひと)の顔一つずつ除夜の鐘 石黒賢一
故人(なきひと)の顔一つずつ除夜の鐘 石黒賢一
『合評会から』(三四郎句会から)
諭 除夜の鐘を聞きながら、故人を一人ずつ偲んでいるのですね。
雅博 除夜の鐘を聴く人に共通する心情を、上手に表していると思う。
正義 その通りですね。一人一人が、それぞれに成仏されているのでしょう。
而云 鐘の音一つ聞くごとに、亡き人一人ずつの顔が浮かんでくる。省略が効いています。
豊生 我もまた鐘の一つに・・・。いざ、晩節を正しく、清く、と思っております。
* * *
大晦日の夜の日付が変わる頃、近くの寺院の撞く除夜の鐘が「ゴーン、ゴーン」と聞こえてくる。この鐘の音は、人の心にある百八の煩悩を祓うため、と言われている。さて合評会で、掲句について「皆さん、語り終えたかな」と思った時のこと。最年長の豊生氏が、至極真面目な表情で、上記のことを話し出した。著名な仏教寺院で修行の経験を持つ方だが、その真剣な表情を見て、句会の全員が粛然とせざるを得なかった。
(恂 22.12.30.)