祖母が着て母着た晴れ着七五三  池内 的中

祖母が着て母着た晴れ着七五三  池内 的中 『この一句』  七五三は子供の健やかな成長を祝う伝統行事である。11月の吉日に三歳、五歳、七歳の子供と親が神社や寺にお参りし、子供の無事を感謝しさらなる成長を願う。掲句はその七五三を晴着に着目して詠む。おばあちゃんが着て、その娘であるお母さんが着たという晴着が秋の陽に映えている。「着」の文字を繰り返し使うことで、晴着が代を重ねて大事に受け継がれてきたことを印象付けている。  ところでこの晴着を着ているのは誰であろうか。七五三の主役は子供だから、三歳か七歳の娘さんと考えるのが普通だろう。祖母、母、娘と三代に渡って使われた晴着ということになる。しかし子供の着物は汚したり傷んだりしやすいので、子供を連れて来た母親の着物ととれないこともない。その場合は若い母親が着る色留袖などの晴着となるが、いずれにしても七五三との組合せから、秋晴れの境内と幸せそうな家族の姿が浮かんでくる。  和服は洗い張りをすれば生き返る。仕立て直しも容易で、何代にもわたって着ることが出来る。求められる循環型社会にぴったりの衣料だと思うが、残念ながら日常的に着る人は減るばかりだ。句会での作者の弁によれば、川越の古着屋で着物を見ていて着想を得た句だという。自分の子供の七五三はレンタルで済ませたというオチが付いて、大笑いとなった。 (迷 22.11.17.)

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