コスプレの少女の夜寒渋谷駅   徳永 木葉

コスプレの少女の夜寒渋谷駅   徳永 木葉 『この一句』  渋谷をよく知る人は、渋谷駅では普通の日にもコスプレを見かけるというが、やはりこの句はハロウィンを詠んだ句だろう。  ハロウィンは好きではない。なにが面白くて、あんな格好で騒ぐのか訳がわからん、と常々思っている。ハロウィンを季語にしたい向きもあるようだが、出来るかぎり引き伸ばしてほしいと思っている。一方で、「最近の若者は」などとは、間違っても言いたくない。むかしの、ヘルメットとゲバ棒の時代、あるいは、ジュリアナ東京に代表されるディスコの時代など、いまのハロウィンと似たようなものではなかったか。どこかで発散させたい若さは、いつの時代にもあったし、これからもあるだろう。  掲句は「少女の夜寒」がとてもいい。肌寒い季節に、露出度の多い、いかにも寒そうなコスプレをしていることを指すのだろうが、この言葉は少女の内面の「夜寒」も指し示しているように思う。ひょっとしたら、「ほんとは、コスプレなんか好きじゃないけど、仲間はずれになりたくないし」と思っているのかもしれない。年寄りの妄想であることは言うまでもないが、「この子に幸あれ」と思わずつぶやいてしまう。時代を写しとった、せつない一句である。 (可 22.11.13.)

続きを読む