十月の外出今日は何を着る    横井 定利

十月の外出今日は何を着る    横井 定利 『季のことば』  月名を詠むのはなかなか難しい。旧暦の「睦月、如月、弥生・・師走」はそれぞれ特有の意味を持っているからまだ詠みやすいが、これをそのまま現代のカレンダーに当てはめて、十月を「神無月」と詠んでしまうと季節感をはずした句になってしまう。神無月は現代暦に当てはめれば11月で、冬の季語だから、これで10月を詠むとおかしな句になってしまう。  というわけで、味も素っ気もない数字の月名を季語に立てて詠むとなると、さて「十月とは」と考え込んでしまう。晩秋なのだが、温暖化の昨今は結構暑い日もある。それに、「天高く」などと言うけれど、十月は天候定まらず、二日も三日も雨が降ったり止んだりのぐずついた天気の続くことが多い。「実りの秋」と言っても、都会暮らしの身には農業が遠い存在になってしまっている。農家も昔のように一族郎党寄り合っての稲刈りなどは無くなって、コンバインがざーっと刈り、脱穀、という具合に、収穫風景もすっかり変わってしまった。  ただ、万古不変なのは「十月の気温変化の激しさ」である。寒気を伴った大陸の高気圧が張り出したり引っ込んだりするたびに天気が変り、気温が激しく上下する。さしあたりこの「気温変化」を「十月」という季語の特徴と定めると句が作りやすくなる。この句はそのお手本を示してくれた。「薄いシャツじゃ寒いし、厚ぼったい上着は着たくないし」と、外出のたびに悩む十月である。 (水 22.10.26.)

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