スペインのおこげ愉しむ秋灯下 徳永 木葉
スペインのおこげ愉しむ秋灯下 徳永 木葉
『この一句』
9月半ば、句友打ち揃って等々力渓谷と九品仏浄真寺を吟行した時の作品。
吟行と言うと打上げは概ね蕎麦屋か和風酒場に落着くのだが、今回は一行中の光迷さんが自由が丘の知る人ぞ知るスペイン料理屋「エル・ペスカドール」に案内してくれた。特産の生ハムやソーセージはもとより、茄子の唐揚げにハチミツをかけたものなど珍しい料理が次々に出て、締めは名物の魚介パエージャ。
スペインワインにスペインビール。ことに「スペインビールはグラスを使わず壜から直飲みするんです」と言われて、おしとやかな三代さんは目をシロクロさせながら飲んで、むせて、一同喝采。愉快な打上げとなった。
日本では普通「パエリヤ」という南欧の炊込御飯をこの店では現地発音か「パエージャ」という。分厚い鉄鍋に米とエビやカニ、貝などをどっさり入れて、スパイスを混ぜ込み炊いたもの。おこげを作る炊き方が秘伝らしい。これを鍋奉行の愉里さんががりがり引っ掻いて皆に分配する。とても美味しいし、愉しい。そのせいか、吟行句会では参加11人中6人がこのおこげ御飯を詠んで出句した。
「スペインのおこげ愉しむ」と、なんの小細工も無く、すっと詠んだところがこの南欧風小料理屋でのにぎやかな打上げ会の雰囲気をよく伝えている。
(水 22.10.14.)