竿売りの絶えて久しき竹の春    篠田 朗

竿売りの絶えて久しき竹の春    篠田 朗 『合評会から』(日経俳句会) 鷹洋 これはね、昔のあれですよ。「竿や~サオダケ~」って、売りに来てた。その昔の事を思い出して、懐かしさで頂きました。 三薬 一緒です。「竿や~」を思い出して、採りました。 実千代 私の記憶のなかに微かに息づいている光景です。 十三妹 竹竿だけでなく、プラスチックの竿売りの声もなし。スピーカーの騒音は嫌ですが、無ければ淋しい。           *       *       *  昭和40年代初めまでは真竹の物干竿を担いで、節をつけた売り声を上げながら竿竹売りが流していた。それが40年代末頃には十三妹さんの言うように、小型トラックに積んで低速で走りながら、拡声器で売り声を振りまくようになり、竿竹も本物の竹ではなく、プラスチックやスチールパイプに変わった。  そして最近は竿竹売りトラックがばったり姿を見せなくなった。竿売の中に悪いのが居て、「一本千円〜、古竿を引き取りまーす」と拡声器で客を釣り、声を掛けられると3本固めて運び込み、古竿をさっさと車に積んでしまい、3千円プラス廃棄処分臂7千円の合計Ⅰ万円を要求したりする。消費者センターに苦情が殺到、取締が始まったせいだとも言われている。一方、洗濯機と乾燥機が進化して屋内干しやバルコニーの夜間干しで十分干せるようになり、竿竹の需要が無くなったという説もある。真相ははっきりしないが、あらゆる「呼び売り」が昔語りになりかけている。 (水 22.10.12.…

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