八月や既往症また一つ増え    嵐田 双歩

八月や既往症また一つ増え    嵐田 双歩 『この一句』  この句は作者自身にとっても、我らが俳句会にとっても、「記念すべき一句」である。なんと、この作者がコロナに感染してしまったのである。  感染経路は不明らしい。私のように不摂生の極み、どこへでも出かける、年甲斐もなく暴飲暴食の無茶苦茶と違って、この人は非常に真面目でコロナ対策も十分に行っていたのに、どういうわけかかかってしまった。幸い熱はすぐに下り、「隔離」は二日で済んだというから軽症だった。自宅待機期間も過ぎて無罪放免となったのだが、「まだ時折咳が出るので、皆さん気持悪いでしょうから」と句会を休むことになり、大ぴらになった。  句会で世話役からこの大ニュースが発表されると、「へー」とか「わっ」とか「記念すべき第一号」などと声が上がった。もうそこには二年半前の始まりの時のような、「恐い」という感じは全く無い。未だに新規感染者が日本全国で一日20数万人も出ているというのだが、「慣れっこ」になってしまったのだ。何しろソーリダイジンまでが感染しちゃったのだからマンガである。  しかし、このCOVIDなんとかというウイルス病は法律に定められた伝染病だから、かかった人は今後、医療関連の書類の「既往症欄」に記入する必要があるのだろう。  「既往症コロナ、なんてカッコイイな」と、「馬鹿は風邪も引かぬ」と言われている身にはちょっぴり羨ましいような気もするのである。 (水 22.09.04.)

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