葛の花老いには重き乳房かな 高井 百子
葛の花老いには重き乳房かな 高井 百子
『合評会から』(酔吟会)
迷哲 女房もこれに近いようなことを言っていたことがあります。「葛の花」は下に垂れて咲くので、それと取合せたのでしょうか。内容の深い句です。
三薬 乳房を持て余している人の作った句か、あるいはなりすましの句か。
水牛 女のさがをうまく詠んでいて、「葛の花」との取合せ、配合もなかなかの句です。
双歩 男性には共感のしようのない句で、手が出せませんでした。女性の沢山いる句会だったらどういう評価になるのだろう、などと想像します。
水牛 こういう句は、句を出すのも、句評を語るのも勇気がいります。
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男にはない乳房の存在を詠んで、ひとしきり句座が盛り上がった一句である。この日、女性の出席は作者を除いて二人。選句したのは男性だけで女性は採らなかった。女性だけれど老境にないから実感できないという理由なのかどうか分からない。「重き乳房」は作者が後から言ったように物理的な重さを意味しないのは自明だ。比較的高齢者が多い句会だから、こんな句を出してもいいと思ったとも言う。たしかに句会の年齢層や男女比を考えて投句するのは当然のこと。しかし過度に配慮する必要はないだろう。いい句はどこに出してもいい句だ。そう言いながら筆者は採れなかった。後期高齢まぢかの妻の姿が重なって躊躇した。だが老若男女を問わず評価を問うてみたい句なのは間違いない。案外に評点は高いのではと思う。(葉 22.0…