夜濯ぎや男やもめの独り言 加藤 明生
夜濯ぎや男やもめの独り言 加藤 明生
『合評会から』(日経俳句会)
鷹洋 情景が浮かんできた。こうはなりたくないなあと思い、一票入れました。
方円 男やもめの独り言ってのはまあ、想像がつくというか、よくわかる。「夜濯ぎ」の季語と「男やもめ」がぴったりだ。
青水 どこかで出会った記憶があるような句ですが、敢えて頂きました。古めかしい季語とそれにぶつけた男やもめの十二音とのバランスが、最近のボクの気分にうまくマッチしました。
てる夫 夜濯ぎは今どき、死語だろうが、いろいろ思い浮かぶ。夜中の洗濯、手製の銃器?ひとり言?不審な話題になりそう。
木葉 「夜濯ぎ」で成立しているが、「男やもめの独り言」は定型句で、何にでも合いそうだ。
朗 夜の洗濯は近所迷惑なんで、恐る恐るやりました。支局時代の切ない思い出がよみがえります。
* * *
「男やもめの独り言」は言い古された文言だと、句会では貶す声が多かったのだが、これに「夜濯ぎ」という季語を取り合わせると、ぱっと生き返る。幸いまだ男やもめになってはいない筆者も、「そうだろうなあ」としみじみとして一票投じた。季語の力は大したものである。
(水 22.08.09.)