黴臭き古書店にいる本の虫    植村 方円

黴臭き古書店にいる本の虫    植村 方円 『合評会から』(日経俳句会合同句会) 反平 ともかく古本屋が大好きです。この句はいいのだけれど、あの匂いは黴の匂いじゃなくて、古本の持ってる尊い匂いだと思います。 水牛 ここに詠まれている本の虫は、この店に毎日来る客なのでしょう。どの本屋にもそういう人がいるのだけど、あんまり買うことはしない。そういう人を見ている方が面白いなと思って採りました。 三薬 いいのだけど、「本の虫」で紙魚と人間の両方をかけるのは、ちょっとやり過ぎのような気がしました。 春陽子 神田古書店に徘徊する本好きを、「本の虫」と捉えて詠むのは絶妙です。 実千代 古書店の匂いと本の虫である作者の様子が手に取るように分かります。           *       *       *  この句を採った人はおおむね、本の虫を二本足の虫だと捉えているが、採っていない人の中には、文字通り「紙魚」を詠んだ句と解釈した人もいた。また、この句を採った人は、筆者も含めて、ほとんどが古本屋好き。この句の作者も大の古本屋好きで、古本屋愛が詠ませた句に違いないと思い込んでしまった。ところが、作者は、たまに通る荻窪の古本屋の換気が悪くて中に入る気がしないという。しかも、その店に人が集まるのは、エロ本が目当てだともいう。居並ぶ古本屋好きはみんな欺された心持ちになった(に違いない)。蕎麦屋だと思って入ったら、饂飩屋ならまだしも、金物屋だったという気分??いずれにせよ、思い込みは禁物。 (可 …

続きを読む