薫風や湯浴みのあとのジンライム 高井 百子
薫風や湯浴みのあとのジンライム 高井 百子
『この一句』
初夏の夕暮れ時、野山を渡って来た風に吹かれつつ、ロックグラスを片手に、茜色に染まり始めた空を眺めている――そんな光景が目に浮かぶ。ゆったりした寛ぎの時だ。早目に湯浴みしたのは、庭仕事に精を出したからなのだろうか。信州は塩田平の、目の前を電車が通り、その先には独鈷山という作者の家を想って、そんな想像をした。
それにしてもジンライムとはお洒落な飲み物を手にしたものだ。聞いてみると「これ美味しいよ」と、ご主人に舶来物のジンを教えられたのがきっかけだとか。ジンライムを作るのは難しくはない。よく冷やしたグラスに氷を入れ、ドライジンとライムジュースを3対1の割合で注ぎ、スライスしたライムを添えれば出来上がりだ。
「薫風」は青葉・若葉や草花の薫りを含んだ優しい風で、「風薫る」という使い方もする。その風を受け、ライムの香りにも包まれ、さぞ爽快な気分になったことだろう。「口当たりがいいので、ちょっと酔っ払って」という言葉ももれた。それはアルコール度数によるのではないか。日本酒やワインは15%程度だが、ジンは40%はあろうから。
(光 22.06.13.)