蟇出でて地域デビューのゴミ当番  中村迷哲

蟇出でて地域デビューのゴミ当番  中村迷哲 『合評会から』(酔吟会) 三薬 この「蟇」は自分のことを詠んでるのでしょう。カエルのようにへばってないで、ちゃんと仕事してよとカミさんに言われたのでは。 鷹洋 引っ越したばかりでしょうか、亭主がカミさんに言われて動く姿が目に浮かびます。「蟇出でて」が面白いです。 木葉 なぜ「蟇出でて」なのかよくわからなかったのですが、三薬さんの作者自身のことだという解釈で納得しました。           *       *       *  作者には自然の景観を美しく詠んだり、昔の思い出の断片を五七五に表現する作品が多い。例えば前者は「奥久慈に氷花(しが)流るるや春隣」、後者は「摘果終へ父と並んで冷し汁」など、佳句ばかり。ところが掲句は、同じ作者とは思えないほど句風が異なる。自然の景色でもなく、昔の記憶でもない。いわゆる身辺雑記なのだ。身近な句材だけに、ややもすると報告調に陥りやすいが、読者の共感もまた得やすい。この句は自身をヒキガエルと称し、ゴミ当番でご近所デビューしたという。実に俳諧味たっぷりだ。  身辺雑記といえば、水牛さんは「日常茶飯句」と言い換えて「これからは臆面もなく日常茶飯句を作っていく」と当ホームページの「水牛のつぶやき」というブログ(3月10日付)で、宣言していた。  そういえば、一茶も子規も身辺雑記がほとんどではないか。 (双 22.03.21.)

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