旧姓にもどりしとかや花菫 今泉 而云
旧姓にもどりしとかや花菫 今泉 而云
『合評会から』(番町喜楽会)
愉里 旧姓に戻るのは女性ですね。どうしたんだろう、何があったんだろうという興味だけでいただきました(笑)。
可升 「とかや」とあるから「また聞き」か「うわさ」ですね。女性の境遇の変化と「花菫」の季語が合っています。
迷哲 「とかや」の措辞に、離婚した女性を遠くからそっと見守る気持ちが伝わります。可憐な「花菫」がよく合っています。
作者 昔、同窓会があったとき、「あの人旧姓になったんだよ」という人がいて・・・。そんなところから詠みました。宝塚風の人でした(笑)。
* * *
筆者は菫と聞けばすぐ宝塚歌劇団を連想する。嫋やか、かつ逞しい女性の象徴としての菫があり、躊躇なくこの句をいただいた。旧姓にもどったのだからまず女性であり、離婚を聞き及んだものと読める。離婚話をテーマにしながらネガテイブな感じがとても薄い。季語「花菫」のもつ可憐さのせいだろう。それどころか人生の躓きがポジティブにさえ映る。女性の手になる句だとばかり思っていたら、あにはからんや男の句だった。「とかや」で逃げたのは心憎い。
作者のコメントにあるように、きっと宝塚にでもいそうな女性なのだろう。躓きをものともせずに、これからの人生を踊ったり跳ねたりするに違いない。
(葉 22.03.18.)