うららかや嫁に蒸籠を贈る妻 須藤 光迷
うららかや嫁に蒸籠を贈る妻 須藤 光迷
『合評会から』(番町喜楽会)
青水 意地悪く言うと、嫁姑のあらまほしすぎる光景の句です。「蒸籠」でいただきました。
春陽子 蒸籠とは今時珍しい。二人の関係をいろいろと想像いたしました。
木葉 贈ったのが蒸籠で、あぁ本当の話なんだなぁと思いました。蒸籠からぽっと湯気が立っている春らしい光景ですね
迷哲 仲の良い嫁姑関係に心のなごむ句です。
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蒸籠は竹や木を編んで作られた蒸し器のこと。一読した時には「竈(かまど)譲り」とか「杓子渡し」のような、姑から嫁へ台所の実権を譲る風習を詠んだ句と思った。ところがいろいろ調べても「蒸籠譲り」は出てこない。句をよく見ると「贈る」ではないか。姑が料理好きのお嫁さんに蒸籠を文字通りプレゼントする。仲の良い現代の嫁姑関係を詠んだ句であり、「麗らか」というのどかな春の日を表す季語とぴったり合っている。
作者の弁によれば、お嫁さんの誕生日に奥さんが贈ったもので、子供たちとシュウマイを作ったりするお嫁さんは大変喜んでいたとのこと。とすれば贈られたのは点心を蒸すのに使う中華蒸籠に違いない。息子や孫たちの好物の蒸し料理のレシピも添えられていたと想像すると、さらに楽しくなってくる。
(迷 22.03.15.)