春うれひ所詮些細なことばかり 堤 てる夫
春うれひ所詮些細なことばかり 堤 てる夫
『合評会から』(番町喜楽会)
双歩 嘘か本当かわかりませんが、一説に「女は春愁」「男は秋思」とか言いますね。どちらにしろ、まぁ「春愁」は首を吊るほど深刻ではないのかも…。この句の通りだと思います。
青水 双歩さんの説にはちょっと同意できませんが(笑)、この句は「所詮」がいいですね。類句がありそうだけれど、「所詮」の軽みがいい。
的中 春になって、どこか憂鬱なんだけど、所詮大したことではない。こんな気分になったことがあります。「春愁」とはこんな感じなんでしょう、特に新型コロナで気分が晴れない時期の思いをよく表しています。
てる夫(作者) まぁ、こういうことです(笑)。
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句会では「春愁」を巡る意見が交わされた。どこか物憂い、なぜか物悲しい気分になった経験は、誰しも持っていることだろう。自分の日々を振り返っても、心に引っ掛かることは諸々ある。しかし、すぐに手を打たなければ…という事柄はない。作者は「春愁」の要因を「所詮些細なことばかり」と切り捨てた。気怠い感じの「春愁」と、それを一刀両断にした「決然」ぶり、その対比に惹かれる。(光 20.03.13.)