小さき子言いわけ顔の春灯下 宇野木 敦子
小さき子言いわけ顔の春灯下 宇野木 敦子
『合評会から』(三四郎句会)
信 幼い子が何か悪い事をしたのを春の灯の下で「あのね、あのね」と泣きべそをかいて言い訳している。その雰囲気が何とも言えないですね。幼い頃の自分を思 い出しました。
而云 この子は「遅くならないように」と母親に言われていたのかもしれない。しかし「春灯下」という場面設定によって、他のさまざまな言い訳も思い浮かびます。
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「春灯下」という語に、なまめかしい雰囲気を感じてしまうのは大人の悪い習性だろう。しかし掲句を見つめ、じっくり思い起こせば、幼児の頃の、様々な春灯下の状況が浮かび上がって来て「そうだ。自分にも・・・」と呟きたくなる。遠い昔の懐かしい、そして少々悲しい思い出である。
句の詠み方ついて二つほど指摘させて頂きたい。まず「小さき子」の読みは「ちいさき子」だが、この場合は読みの短縮形を用い「小さき(ちさき)子の」としたい。そして中七に「言いわけ顔や」と「や」による“切れ”を入れるのだ。
小さき子の言いわけ顔や春灯下
母親に一生懸命言いわけをしている幼児の顔がクローズアップされてくるのではないだろうか。
(恂 22.03.02.)