動くもの雪のほかなく暮れ落ちる 水口 弥生
動くもの雪のほかなく暮れ落ちる 水口 弥生
『合評会から』(日経俳句会)
迷哲 夕暮れの静かな景色が見えてきます。暮れ落ちる、が気に入りました。
水兎 豪雪地帯は昼間も暗く、暮れるのも早そうです。
而云 ガラス窓の向こうにある光景を詠んでいると見ました。静かな状況が端的に詠み込まれていて。感心しました。
明生 雪国の一日とはこんな感じなんでしょう。よく伝わってきます。
光迷 その場に身を置いていて詠んだような佳句だ。鑑賞していて身に沁みた。
三代 暮れ落ちるがおしゃれ。
オブラダ 降る雪と暮れゆく光景。言葉の対比が美しい。
定利 どんな町か。いろいろ想像できます。
木葉 降っているんじゃない。暮れ落ちているんです。
* * *
必ずしも雪国とは限らない。東京でもいい。しんしんと降る雪は四辺を別世界にしてしまう。建て込んだ住宅街の片隅の一戸なのに、まるで奥深き山里の一軒家のような感じになるのが、雪の魔術である。雪が音を吸い取り、光を遮ってしまうからであろう。すべてを眠らせてしまう雪。しきりに降る雪を見つめている作者がシルエットになって浮かんで来る。
(水 22.02.06.)