予報士のペンギン歩き凍る道   大平 睦子

予報士のペンギン歩き凍る道   大平 睦子 『この一句』  NHKの連続テレビ小説で昨年放映された「おかえりモネ」は、気象予報士の女性が主人公となっていた。気象予報の会社に就職したモネが、震災体験を乗り越えて成長していく物語だが、番組の中で予報士の仕事が詳しく紹介され、興味深かった。番組では、新米予報士のモネが最初に屋外の中継キャスターを担当する。スタジオの呼びかけに答えて外の気温や空模様をリポートする、いわゆる「お天気姉さん」の役だ。簡単そうに見えるが、短い時間に天気の状況を分かりやすく伝え、視聴者に役立つ豆情報を提供するには知識と工夫が要る。 東京を中心にかなりの雪が降った1月6日は、テレビ各局の気象予報士が申し合わせたように、雪道でのペンギン歩きを紹介していた。作者もそれを見て句に仕立てたのであろう。雪道で転ばないためには、歩幅を狭くして、靴裏全体で接地してすり足で歩く。両手でバランスを取ってソロソロ歩く姿は、確かにペンギンそっくりである。中には歩き方を実演してみせるキャスターもいた。掲句はその姿をリズムよく詠んで、笑いを誘う。ユーモアたっぷりの句だが、雪国育ちの作者は、故郷では誰もがやっていることを、番組でことさら強調する東京人のひ弱さを笑っているのかも知れない。 (迷 22.02.03.)

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