草も樹も土も御降やはらかく   嵐田 双歩

草も樹も土も御降やはらかく 嵐田 双歩 『季のことば』  新年の季語で天文に分類されるものに「御降(おさがり)」と「淑気(しゅくき)」がある。両方ともなまなかな国語辞典には載っていない語彙である。別に「御降り」というのがあるが、これは「おくだり」と読み神霊が神座に下ることを意味している。また神輿が町内の旅所に寄るのも御降(くだ)りというようだ。季語としての御降はこれらに派生するものかどうか、浅学の筆者には分からない。いずれにしても御降、淑気とも新しい年を寿ぐ雰囲気がこもっていて、新年にふさわしいまたとない季語だと思う。御降は元日から、少なくとも三が日の間に降る雨または雪だというのは、俳句を詠む人にとって常識。だが、つい目出度い気分も添えたいと欲張って難儀する。  掲句である。まず「草も樹も土も」とたたみかける措辞が目を引く。作者は草木土に限らず森羅万象が新年の余慶にあずかっているといいたいのだろう。上五中七を一気に読ませて下五の「やはらかく」に収斂するこの句は心地よい。理屈のない情景描写に徹したのが心地よさの元かと思う。  新年三が日の休みは、ある意味リセットの期間といえる。旧年中の善事悪事も、由し無し事も一から出直しの気分がある。そんな気分のなか、雨だろうか、柔かく地上の万物を洗い清めているというのがこの句の情景だ。そのうち雪にでも変わってくれば、年替わりのより目出度い雰囲気が増すに違いない。 (葉 22.01.01.)

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