息災の二文字の重さ年暮るる 中村 迷哲
息災の二文字の重さ年暮るる 中村 迷哲
『合評会から』(日経俳句会)
方円 コロナとか色々あったけど、何とか今年も乗り切った。よかったなという、今年を代表しているという意味で。
可升 高齢化とかコロナ禍の中でよくぞ息災であった。「二文字の重さ」がひじょうに上手いなと思った。
三代 自分も年を取ったなと思っていて。「年暮るる」の季語が実感だなあと。
正市 「年暮るる」はこんな感じで、息災のイメージと一致する。
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今年最後の句会で最高点を取った一句だ。二年にわたり翻弄され続けているコロナ禍生活の今年も「数え日」近し。ところで「息災」の二文字をどこで見たのだろうか。最初、受け取った手紙の中かなとも思ったが、作者の句意を聞くとそうではないようだ。作者によれば、「女房と二人で一年間コロナやワクチンの話をしていた。健康で生き延びたということです」と言う。ともあれ今年が暮れるにあたって誠にふさわしい俳句と思える。息災という古めかしい言葉が生きている。ためしに「息災」を「健康」と、より易しい言葉に置き換えたとしたら句の優劣は歴然とする。やはりここは息災を使うしかない。年の終わりにはその年らしい秀句が飛びだすと常々思っているが、今年の句会もその通りだった。(葉 21.12.31.)