熊眠るルシャの番屋の板目貼   中沢 豆乳

熊眠るルシャの番屋の板目貼   中沢 豆乳 『合評会から』(日経俳句会) 三薬 最初、クマが番屋で寝ている?うん?いやいや違う。そうだ!上五で切る。すると、景が見えてくる。ルシャは知床半島の海岸。その番屋の目貼を詠んでいる。 てる夫 知床半島のルシャ湾。昔、行ったのですが、その時は気づかなかったなあ。ルシャを調べて状況がわかると、いい雰囲気が伝わってきました。 明古 ルシャとはアイヌ語で「浜へ下りてゆく道」。知床半島のルシャ湾の番屋は、板を打ち付けて防風している。力のある句で、真っ先に戴きました。 朗 シベリア抑留をイメージした。 誰か クマ、ルシャ、番屋、板目貼、と。材料が多すぎなんだよナー。 而云 知床のルシャの番屋の板目貼、じゃあ駄目なの? 一同 うん。それが良い。すっきりしている。「の」を重ねて、リズムも良い。           *       *       *  私は常々固有名詞を句に使う時は、十人中半数以上が知っているものでないとうまくないと思っているので、「ルシャ」に引っかかって受け入れ難かった。しかし、作者の「ルシャ湾の鮭漁師大瀬初三郎さんはヒグマと共存している。ヒグマが人間の言うことを聞くというので有名になった。ここは冬になると氷が飛んでくるので、板で囲いを作る。冬眠する熊と板囲いが詠みたくて・・」という述懐を聞いて、己の浅はかさを知った。三薬さんの言うように、「熊眠る」で切れて「ルシャの番屋の板目貼」と続く、堂々たる一句である。 (水 21.1…

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