朝の汁青菜ざくざく冬に入る 廣上 正市
朝の汁青菜ざくざく冬に入る 廣上 正市
『合評会から』(日経俳句会)
迷哲 語調が良いです。冬の朝の味噌汁の感じがよく出ている。
水兎 昔のお味噌汁のCMのようで。おいしそうな光景ですね。菜切り包丁の音が聞こえてくるようです。
ヲブラダ ざくざくが良いですね。
三代 「あ」の重なりがよく、声に出すとざくざくも小気味いいです。
方円 冬に入るの季語が効いている。
睦子 青菜の朝ごはんで食欲が出ます。
* * *
冬の朝の台所の景であろう。ホウレン草か小松菜か、冬場が旬の青菜を刻んで味噌汁を作っている。「ざくざく」の擬音が効果的で、野菜を刻む包丁と俎板、鍋たっぷりの味噌汁から立ち昇る湯気が浮かんでくる。三代さんご指摘のように「アサ・アオ・ザク」のア音の連なりがリズムを生み、朝の台所の忙しい雰囲気を醸している。
作者は退職後に神奈川県二宮に移住し、趣味の畑仕事に熱心に取り組んでいるという。「手を見つめ掌見つめ大根撒く」など農作業を詠んだ句も多い。冬野菜は寒さに耐えるため細胞に糖を蓄え甘くなる。丹精して育てた青菜の甘さに、冬の訪れを強く感じたのではなかろうか。
(迷 21.11.26.)