帰りたい病床十日冬に入る    大平 睦子

帰りたい病床十日冬に入る    大平 睦子 『合評会から』(酔吟会) てる夫 さっき白山さんから退院したとの電話がありましたが、十日も入院していれば嫌になるだろうなというのがよくわかります。身に沁むような話です。 而云 ぼくも白山さんのことを少し思いましたが、他でも周りに十日くらい入院している人が何人かいて、帰りたい気持ちになるだろうなあと思いました。 鷹洋 白内障の手術で三泊四日入りましたが、三泊四日でもたまらん気持ちになりました。十日なんてとんでもないことです。 誰か (作者が睦子さんとわかって)あの人は膝を手術されると言っていたなあ。これは実話なんだ。           *       *       *  「白山さん」というのは句会常連の古参会員。突然、大腸憩室症というのが起こって入院していたが、句会の席上に「ただいま退院しました」と電話が掛かってきたので、合評会はそれとごっちゃになった。会員の高齢化が進み、入院とまでは行かないまでも、それぞれ何らかの問題を抱えているから、こういう句を見ると思わず一票投じてしまう。  この句は何と言っても冒頭の「帰りたい」が効いている。そして、続く中七で「病床十日」と来れば、誰しも「ごもっとも」と思う。そして、季語の「冬に入る」が絶妙な働きをしている。 (水 21.11.21.)

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