秋寒や妻にふえたる独り言 玉田 春陽子
秋寒や妻にふえたる独り言 玉田 春陽子
『合評会から』(番町喜楽会)
可升 女房が急に独り言が多くなったら、何か悪いことの予兆かと心配になります。
水牛 わが家内も独り言が増えたり物忘れが激しくなって、診察してもらったら、認知症の初期だと言われ進行を遅らせるための体操などしています。身につまされる句です。
双歩 確かに心配です。お大事にとしか言いようがない。
迷哲 「秋寒」が効いていて、怖いような、寂しいような感じがしますが、一方で、作者の優しさもにじんでいる句です。
而云 一人暮らしとか、歳をとってから、独り言の多くなる人は結構いますね。
斗詩子 冬支度でやることが一杯あって奥様は大忙し。「どうせ旦那様は手伝ってくれそうもないし・・・」ぶつぶつ言っている奥様の気持ちがわかります。
* * *
男性陣は揃って病いの予兆のようなものを感じている。紅一点の斗詩子さんだけが、この「独り言」は忙しさや旦那に対する不平から来る愚痴のようなもの、日常茶飯事だと捉えている。作者によれば、斗詩子さんの解釈がドンピシャらしい。
男性陣の解釈の原因は「秋寒」だろう。これがやがて来る冬を想起させるのは自明である。「小春日の妻にふえたる独り言」だったら間違えなかったに違いない。しかし、それではこんなに点を集めることもなかっただろう。いずれにせよ、世の中の男たちはみんな、女房にもしものことがあったらという内心の不安に怯えていることの証左である。…