吟行の軽きシューズや翁の忌 今泉 而云
吟行の軽きシューズや翁の忌 今泉 而云
『合評会から』(番町喜楽会)
水牛 「翁の忌」と取り合わせるのに「ウオーキングシューズ」という新しい言葉を持ってきたのがいいですね。軽快さも感じる。
双歩 現代的な「翁の忌」の句だと思いました。新しさを感じます。
水馬 (メール選評) 先日の久しぶりの吟行、十月半ばに深川の芭蕉ゆかりの地を訪ねた楽しさが詠まれていると思います。
而云(作者) 最近は通勤にもウオーキングシューズをはく人が多いですね。軽いのですよ。
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俳句の世界で「翁」と呼ばれるのは芭蕉である。芭蕉は「おくのほそ道」や「野ざらし紀行」などに見られるように、よく旅をした。そして句に仕立てた。西に東に歩き回るとなれば、足元をしっかりさせる必要がある。ところが、芭蕉の時代は草鞋が中心だった。「年暮れぬ笠きて草鞋はきながら」の句が、それを表している。打って変わって現代は、科学技術の進歩によって、軽く柔らかく、少々の雨に降られても大丈夫、さらにはクッション性に優れ、体を前へ前へと進めるような靴まで登場している。歩きやすく、疲れにくい。何とも有難い、幸せなことである。
(光 21.11.16.)